
MTV「ハッスル」シーズン5開幕!新メンターとしてアグジー(Agsy)が参加!!
インド最大のヒップホップ・リアリティ番組MTV 「ハッスル」が、2026年8月8日よりシーズン5「Apna Homeground」として開幕する。
2019年の放送開始以来、「ハッスル」は単なるオーディション番組ではなく、インド(デシ)・ヒップホップ文化そのものを映し出すプラットフォームへと成長した。MCスクエア(MC Square)、パラドックス(Paradox)、ウデイ(Uday)、ラシュキャリー(Lashcurry)をはじめ、現在のデシ・ラップシーンを代表するアーティストをアンダーグラウンドな存在からメジャーレベルへと押し上げたことからも、番組という枠を超えた影響力を持つ存在となっている。
そんな「ハッスル」がシーズン5で打ち出したテーマは「Apna Homeground(自分たちのホームグラウンド)」だ。
このテーマには、アーティストを育てた土地やコミュニティ、そしてルーツを尊重するという意味が込められている。近年のインド・ヒップホップは、ヒンディー語だけではなく、パンジャブ語、ハリヤーンウィー語、マラーティー語、タミル語など、地域色豊かなラップが急速に台頭している。その流れを象徴するように、今年のスクワッド・ボス(メンター)には、それぞれ異なるバックグラウンドを持つ4人が選ばれた。
EPRはシーズン1の準優勝者であり、シーズン2以降、「ハッスル」を支えてきたメンターであるが、新たに参加が決定したアグジー(Agsy)、MCスクエア、パラドックスの3人はいずれも「ハッスル」出身者であり、メンター全員が「ハッスル」出場者となったことは時代の流れとデシ・ヒップホップの急成長を思わせる。
つまり、これまで番組を見てきた視聴者にとっては、一つの時代が巡り、番組が育てた世代が次世代を育成するという”循環”が始まったことを意味している。
バードシャーが示す「ハッスル」の新たな方向性
審査員(リード・ジャッジ)を務めるバードシャー(Badshah)は、「ハッスル」を通じて単なるラップの技術ではなく、アーティストを形づくるコミュニティや環境に光を当てたいと語っている。
インドのヒップホップは『ガリーボーイ』(2019)以降、一気に全国区となったが、その背景には地方都市やローカルコミュニティから生まれたラッパーたちの存在がある。
シーズン5のテーマ「Apna Homeground」は、そうした”自分のルーツを誇ること”を番組全体で表現する試みでもある。
ちなみにDee MCに日本独占インタビューを行った際にも、今後の課題は言語の壁だと語っていたが、それが少し緩和されているようだ。
アグジー 女性ラッパーの新たなロールモデル
アグジーはムンバイ出身のラッパーであり、MTV「ハッスル」シーズン1への出場をきっかけに広く知られるようになった。
「Medusa」「Kaleshi Chhori」などの楽曲では、女性ならではの視点を前面に押し出し、ジェンダーや自己表現をテーマにしたリリックで支持を集めてきた。男性中心と言われてきたデシ・ヒップホップにおいて、自らの存在を武器にキャリアを切り開いてきたアーティストである。
Dee MCがシーズン2から4まで女性メンター枠を務めてきたが、今シーズンからアグジーにバトンが引き継がれた。
さらに彼女自身が「ハッスル」出身者であることも大きい。挑戦者だった彼女が、今度は新人ラッパーを導く立場となる。その変化そのものが、「ハッスル」という番組の成長を物語っている。
MCスクエア 地方文化を全国へ届けた優勝者
シーズン2優勝者であるMCスクエア、ハリヤーナー州出身。
彼のラップは、ラーグニーなどハリヤーナーの伝統文化をヒップホップへ落とし込んだ独自のスタイルが特徴だ。
「Naina Ki Talwar」のヒットによって、地方言語によるラップでも全国的人気を獲得できることを証明した。
これまでインド・ヒップホップはデリーやムンバイが中心と言われてきたが、MCスクエアの成功は”地方にもスターは生まれる”という新しい価値観を提示した。
「Apna Homeground」というテーマを最も体現するメンターと言えるだろう。
優勝から数年でメンターへ昇格したことは、番組が若い才能へ積極的に世代交代を進めている証でもある。
パラドックス ポップスとラップを結ぶ新世代
シーズン2で準優勝したパラドックスもスクワッド・ボスに就任した。
彼は「Jaadugar」や「Babam Bam」などのヒットで知られ、ラップだけではなく歌心あるメロディーを取り入れたスタイルで若い世代から絶大な支持を集めている。
近年のデシ・ヒップホップは、純粋なバトルラップだけではなく、ポップスやR&Bとの融合が進んでいる。
パラドックスはその流れを代表する存在であり、SNSやストリーミング時代に適応した新しいスター像を示してきた。
挑戦者として人気を集めた彼が、今度は新人の可能性を見極める立場になることは、番組の歴史を考えても感慨深い。
EPR 知性でシーンを支えるOG
4人の中で唯一、これまでスクワッド・ボスを務めてきたベテランがEPRである。
コルカタを拠点に活動する彼は、デシ・ヒップホップ界屈指のリリシストとして知られ、社会問題や歴史、政治、宗教などをテーマにした知的なリリックで高い評価を受けている。
商業性だけを追求するのではなく、「ラップとは何を語るべきか」という問いを投げかけ続けてきた存在でもある。
シーズン2から番組を支えてきた経験を持つEPRは、新たなメンターたちを支える精神的支柱としての役割も期待されている。
アグジー、MCスクエア、パラドックスという若い世代とEPRというOGが共演することで、「ハッスル」は経験と革新が共存する番組へと進化した。
「ハッスル」は”学校”になった
シーズン5最大の見どころは、単なるメンバー交代ではない。
アグジー、MCスクエア、パラドックス、そしてEPRはいずれも番組出身者であり、「ハッスル」という舞台で才能を見いだされ、現在ではデシ・ヒップホップを代表するアーティストへと成長した。
つまり「ハッスル」は、スターを発掘する番組から、スターが次世代を育てる”学校”へと変貌したのである。
Dee MCやイッカ(Ikka)、ディーノ・ジェームズ(Dino James)らが築いてきた土台の上で、新たな世代が後輩を導く。その循環こそが「ハッスル」最大の成功であり、シーズン5はその新たな章の幕開けとなる。
デシ・ヒップホップは今、かつてないほど多様な才能が集まり、それぞれの”ホームグラウンド”から新しい物語を生み出している。「ハッスル」シーズン5は、その最前線を映し出す重要なシーズンとなりそうだ。


