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キアラ・チェットリ(Kiara Chettri)「Looking At You」

インドのインディー・ポップ・シーンから、世界市場を意識したポップスターへ。キアラ・チェトリ(Kiara Chettri)の「Looking At You」は、彼女がここ数年進めてきたサウンドの変化をさらに押し進めた一曲だ。

2003年生まれのキアラは、デリー/グルグラムを拠点に10代から活動してきたシンガーソングライター。母親が音楽スクールを運営する環境で幼少期から音楽を学び、15歳で楽曲をリリース。17歳だった2020年には、10曲入りのデビュー・アルバム『4AM』を発表した。初期の彼女はアコースティックやポップ・バラードを中心とした、いわゆるシンガーソングライター色の強いアーティストだった。

2021年の「Why」はWorld Indie Music Chartsで1位を記録。10代のインド人シンガーソングライターとして国外にも存在感を広げた。ギターやピアノだけでなく、ドラム、キーボード、ウクレレなど複数の楽器を演奏するマルチプレイヤーでもあり、英語を中心に自ら作詞・作曲を行ってきた。

しかし、近年のキアラは初期とは明らかに違う方向へ向かっている。

2024年の「I Don’t Wanna Be Friends」、2025年の「Not Fair」「Stupid Reasons」「Down」、そして2026年の「No One’s Baby」と作品を重ねるなかで、アコースティックなSSWというイメージから、ビートとヴィジュアルを前面に押し出した現代的なポップへとシフト。大学生活を送ったロンドンからインドへ戻った後は、よりグローバルなポップ市場を意識したスタイルを強めている。そして「Looking At You」も、その延長線上。

最大の魅力は、キアラのヴォーカルを必要以上に飾り立てるのではなく、声そのものの存在感を中心に据えていること。初期作品で聴かせていた繊細さを残しながらも、現在の彼女には以前よりはるかに堂々としたポップ・シンガーとしての佇まいがある。

特に重要なのが、「インド人アーティストだからインド的なサウンドを鳴らす」という発想から距離を置いている点だ。

キアラは以前から英語で歌うことへの強い思いを語っており、テイラー・スウィフト(Taylor Swift)、リトル・ミックス(Little Mix)、コールドプレイ(Coldplay)、ラウヴ(Lauv)など欧米ポップからの影響を公言してきた。 「Looking At You」も、いわゆる“インド音楽”を海外向けにアレンジした作品というより、最初から世界の英語圏ポップと同じフィールドに置くことを想定した楽曲として聴くべきだろう。

それは現在のインドのインディー/I-POPを考えるうえでも興味深い。

インドの若手アーティストが世界へ出ていく方法は、必ずしもボリウッドやパンジャブ音楽、インド古典音楽などの要素を強調することだけではない。キアラのように、オリヴィア・ロドリゴ以降のシンガーソングライター・ポップや現代的なR&B/ポップの感覚を自然に吸収し、「インド出身」であることを過剰にサウンドへ背負わせず勝負する世代も育っている。

「Looking At You」は、そんなキアラ・チェトリの現在地を示す一曲だ。

17歳で『4AM』を発表した頃の彼女を知っているリスナーほど、その変化は大きく感じられるはず。内省的なベッドルーム系シンガーソングライターから、楽曲、歌唱、ファッション、映像を一体化させたポップアーティストへ――。

「Looking At You」から見えてくるのは、単なるサウンドの変化ではなく、キアラ・チェトリが“インドの若手シンガーソングライター”という枠を抜け出し、グローバル・ポップのプレイヤーになろうとしている姿なのである。

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