
ルアー・ケーイ(Ruaa Kayy)日本独占インタビュー!!Part1
インド音楽情報サイトだからこそ実現させてきた、インド音楽、インド映画音楽界の最前線で活躍するアーティストや音楽監督、プロデューサー、ときに俳優にまでインタビュー企画。
今回実現したのは、先日『Cocktail 2』のプロモーションでも話題になっていた、ルアー・ケーイ(Ruaa Kayy)
そんなルアーの日本メディア独占インタビュー!!
『ブラフマーストラ』の音楽制作の裏話も?!!
Q1)『Cocktail 2』の「Mashooqa」は本当に印象的な曲です。あなたのヴォーカルパートは短いですが、曲の重要な要素のように感じました。歌う際にとくに意識していたことはありますか?
正直なところ、「Mashooka」を歌ったときに、何か特定のことを考えていたわけではありません。というより、普段から歌をレコーディングするときには、頭の中に具体的なイメージを用意することはあまりないんです。まず楽曲の中に入り込み、何度か聴いて、その曲の雰囲気を感じ取ります。そして、あとは自然に流れに身を任せます。
考えすぎてしまうと、かえって制作のプロセスがうまくいかなくなることが多いからです。なるべく頭の中だけで考え込まないようにして、楽曲そのものや、その空気感を楽しみながら、自然に歌うことを大切にしています。
「Mashooka」のときも、まさに同じように歌いました。
ひとつ覚えているのは、レコーディングをした夜に、かなりひどい風邪をひいていたことです。録音を担当していたエンジニアのアニルド(Aniruddh Anantha)に、「歌えるかどうか分からない」と伝えました。すると彼は、「大丈夫だから、とりあえず来て。一度やってみよう」と言ってくれたんです。
そして、そのときに録音したテイクが、最終的に完成版の楽曲で使われました。だから、そうですね……。振り返ってみると、風邪をひいていたことが、この曲の鍵だったのかもしれません。
Q2)キング主演のAmazonプライムドラマ「ルッケ/Lukkhe」への参加経緯を教えてください。また、作詞作曲の過程で何か困難はありましたか?
「ルッケ/Lukkhe」への参加は、私にとって本当に大きな驚きでしたし、多くのことを学ばせてもらいました。というのも、一曲ごとに異なる課題があったからです。私が歌声を担当している、ひとりの決まったキャラクターがいるので、まずはその人物の核となる部分を一貫して保たなければなりません。
しかし同時に、それぞれの曲では、同じキャラクターが持つ異なる一面が描かれています。しかも、その振れ幅がとても大きいんです。すべての曲が、それぞれ異なるエネルギーや雰囲気を持っています。
キャラクターの本質を保ちながら、一曲ごとにその人物の異なる表情や色合いを表現することは、とても難しい作業でした。
一方で、これは私にとって、とても特別な経験にもなりました。私自身が物語に深く入り込んでいき、作中で描かれる出来事を、自分の人生に重ね合わせるようになったからです。自分の人生でも似たようなことが起きたときには、過去の経験を思い返し、その記憶と向き合いながら、それぞれの楽曲に感情を込めていきました。
この作品では多くの曲を歌っていますが、ソングライター、そして作曲家としても、リトヴィクと一緒に「Savere」という一曲を作曲しています。
Q3)『ブラフマーストラ』の音楽制作に携わっていたそうですね。その時に初めてプリータムと出会ったのですか?それとも、それ以前から彼とは何らかの繋がりがあったのですか?
プリータム・ダーダー(※「Dada/ダーダー」はベンガル語圏などで使われる「兄貴」「先輩」に近い敬称)は、私にとって師匠のような存在です。
ただ、私が彼に出会ったのは『ブラフマーストラ』の制作現場が最初ではありません。
『ブラフマーストラ』に参加するきっかけを作ってくれたのは、サニー・M・R(Sunny M.R.)です。彼は著名な作曲家、音楽プロデューサーで、数々の大ヒット曲を手がけてきました。彼が私をこのプロジェクトに参加させてくれたんです。
当時、私は彼のアシスタントをしていた……と言いたいところですが、正確には少し違います。先に『ブラフマーストラ』のチームに加えてもらい、そのあとで彼のアシスタントとして働き始めました。
一方、ダーダーとは2016年からの付き合いです。当時、私は音楽オーディション番組『Sa Re Ga Ma Pa』に出演していました。彼は審査員を務めていて、私は彼のチームに所属していたんです。番組が終わったあと、私は音響エンジニアリングを学びたいと思うようになりました。するとダーダーが、「自分のスタジオに来て、ここで学べばいい」と声をかけてくれたんです。スタジオで働きながら、彼のエンジニアから実践的に学ぶ機会を与えてくれました。
ですから、私がボンベイへ移住することになったのも、実際にはダーダーの存在があったからです。彼がいなければ、少なくともあの時期にボンベイへ移ることはなかったと思います。
彼は、私の人生において最も重要な人物のひとりです。私を導き、キャリアの進むべき道を示してくれました。彼との出会いによって、私の人生は完全に変わったんです。
ダーダーのもとで働き、彼から指導を受けるなかで、本当に多くのことを学びました。最初はレコーディング・エンジニアとして経験を積み、その後はヴォーカル・プロデューサー、歌手としての仕事、さらには作詞や作曲のプロセスまで、音楽制作に関わるあらゆることを学びました。
そこで得たものは、これからもずっと私の中に残り続けると思います。自分の居心地のよい場所から大きく踏み出し、まったく新しいことに挑戦する機会を与えてくれたことに、心から感謝しています。
そして実際の家族から遠く離れた街でありながら、ボンベイを自分の家のように感じられたのも、彼とその環境のおかげです。私は彼に深い敬意を抱いています。
『ブラフマーストラ』は、私にとって非常に特別なプロジェクトになりました。これまでにない規模と方法で作られた作品だったからです。
私はBGMのミックスに携わり、サニーのアシスタントとしてスコア・ミックスを担当しました。それだけでなく、実際に悪役たちの登場シーンで流れる音楽パートの設計も手がけています。
たとえば、敵側のキャラクターが登場する場面では、その背後でどのような音楽を鳴らすのかを私が考え、組み立てました。悪役それぞれの存在感や空気を音楽で表現する作業です。これは、とても面白い経験でした。
ダーダーとサニーの二人が、私をこのプロジェクトに参加させてくれました。制作中は、何度も役割を切り替えなければならない場面がありました。あるときはミックス卓に座り、またあるときは音楽パートのデザインを行う。状況に応じて、さまざまな仕事を行き来していたんです。
私はそれ以前からダーダーと仕事をしており、すでに3年間、彼のアシスタントを務めていました。そのため、ダーダーとサニーの二人とは、安心して仕事に取り組める関係が築けています。
二人と一緒にいると、とても居心地がよく、自分らしく働くことができます。そして何より、二人が大切な仕事を私に任せ、信頼してくれていることを、本当にありがたく感じています。
Q4)自分で曲を作り始めたのはいつからですか?
実は、私が自分で音楽を作り始めたのは、人生のなかではかなり遅い時期でした。
歌を始めたのは8歳の頃です。父自身も歌を歌っていたので、私に教えてくれるようになりました。プロの歌手ではありませんが、音楽や歌についてきちんと学んできた人で、知識のあるヴォーカリストでもあります。
父から歌を教わり、その後、本格的な歌唱を学ぶようになりました。それから音響工学やレコーディング・エンジニアリングの世界に入り、さらにヴォーカル・プロダクションにも携わるようになりました。
そして、そこから自分で曲を書き、音楽を作り始めたんです。本格的に音楽制作を始めたのは、だいたい3年ほど前のことです。
音楽を作るようになったことで、私の人生は完全に変わりました。正直に言えば、それまでは自分が作曲をしたり、曲を書いたりできるとは一度も思っていなかったんです。
しかし、サニーやリトヴィクのような人たちが、自分自身の音楽を作るよう強く背中を押してくれました。
自分で音楽を作ることは、私にとって本当に解放的な経験でした。音楽を通して、自分の感情をそのまま表現できるようになったからです。
それが、私の人生に起きたなかで、最も素晴らしいことだと思っています。
Q5)曲作りで一番大切にしていることは何ですか?
私にとって最も大切なのは、音楽から生まれる「感情」です。何よりもまず、どのように感じられるかを重視しています。
自分で曲を作るときは、たいていメロディーやメロディーのアイデアから始めます。一方で、誰かの曲を聴くときには、歌詞に強く意識を向けます。
その歌詞が、自分にどのような感情を抱かせるのか。それがとても重要なんです。
たとえ技術的に見れば、歌詞の一部に意味が通っていないところがあったとしても、私にとっては、それほど大きな問題ではありません。
聴いたときに正しいと感じられるか。自分の魂に響くか。そして、その曲に自分自身を重ね合わせることができるか。それが大切です。
自分の人生や、過去に経験した出来事、あるいは今まさに向き合っていることと、その曲を結びつけることができたなら、それだけで十分です。
私にとって、音楽とはそういうものです。

【ルアー・ケーイ(Ruaa Kayy)】
シンガーソングライター兼作曲家、ヴォーカル・プロデューサー。本名はハルジョット・カウル(Harjot Kaur)。パンジャブのルーツを持ちながら、ポップ、R&B、映画音楽などジャンルを横断して活動している。『ブラフマーストラ』(2022)などの映画音楽制作に関わりながら、シンガーとしても映画や配信作品の楽曲に参加する一方、ソングライティングやヴォーカル・プロダクションなど制作面でもキャリアを築いてきた。近年はアリジット・シンをはじめ、インド音楽界を代表するアーティストが関わる作品に参加するなど、その活動領域を広げている。また、映画音楽だけに軸足を置くのではなく、インディペンデント・アーティストとしても作品を発表。パンジャブ音楽のバックグラウンドと現代的なポップ/R&Bの感覚を行き来しながら、自身のサウンドを模索している。歌手、作曲家、ヴォーカル・プロデューサーという複数の立場から、現在のインド音楽シーンを横断する新世代アーティストのひとりだ。


