
ゼファトン(Zephyrtone)「Back 2 U」EDMの高揚感と切なさを凝縮したエレクトロ・ポップ
インドのエレクトロニック・ポップ・デュオ、ゼファトン(Zephyrtone)の新曲「Back 2 U」は、彼らが得意としてきたEDMとポップの接点を、よりコンパクトかつ現代的な形へと落とし込んだ一曲だ。
タイトルの「Back 2 U=Back to You」が示すように、楽曲の中心にあるのは、一度離れた相手のもとへ再び戻っていくという感情。恋愛を題材としたエレクトロ・ポップ自体は珍しいものではないが、ゼファトンの場合、その切なさをバラードとして表現するのではなく、電子音の高揚感へと変換していくところがポイントになっている。
サウンドはシンセサイザーを軸にしたダンス・ポップ/EDMが基本。ヴォーカルを前面に置きながら、その周囲を電子的なビートとシンセが包み込み、徐々にエネルギーを高めていく。派手なドロップで一気に爆発させる従来型のフェスティバルEDMというより、ヴォーカルとメロディを聴かせることを優先したポップ寄りのプロダクションだ。
特に印象的なのは、明るさと寂しさが同時に存在していること。ビートだけを取り出せばダンサブルで軽快だが、メロディやヴォーカルにはどこか物悲しさが漂う。「戻りたい」という感情には、当然ながら「今はそこにいない」という距離が存在する。その空白を埋めようとする感覚が、反復されるフレーズとエレクトロニックなサウンドによって強調されている。
また、インドのアーティストだからといって、いわゆる「インドらしい音」を分かりやすく盛り込んでいない点もZephyrtoneらしい。タブラやシタールなどを使ってインド性をアピールするのではなく、基本的には欧米のエレクトロ・ポップ/EDMと同じフィールドで勝負している。インドのインディペンデント・シーンが、もはや「インド音楽+欧米音楽」という単純なフュージョンだけでは説明できなくなっていることを示すタイプの楽曲でもある。
一方で「Back 2 U」は、Zephyrtoneの初期作品に感じられたEDM的なスケール感を完全に捨てたわけではない。シンセの広がりやビートの組み立てには、2010年代のプログレッシブ・ハウスやエレクトロ・ポップを通過してきた彼らならではの感覚が残っている。ただし、それをそのまま再現するのではなく、現在のストリーミング時代に合った、より直接的で無駄のないポップへとアップデートしている。
ゼファトンにとってEDMは単に人を踊らせるための音楽ではなく、感情を増幅させる装置でもある。「Back 2 U」でも、恋愛における未練や距離、再び相手へ引き寄せられていく感情が、シンセとビートによって次第に大きくなっていく。
インド的な記号に頼ることなく、グローバルなエレクトロ・ポップとして成立させながら、メロディにはしっかりと感傷を残す。「Back 2 U」は、ゼファトンがこれまで培ってきたEDMの感覚を、よりシンプルで聴きやすい現代のポップへと変換した一曲だ。
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