
ケーララ初のラップ・リアリティ番組『Kerala Underground』
『Kerala Underground』は、2026年8月からZEE5で配信予定(当初は14日からとされていたが、まだ未配信)。
マラヤーラム語によるヒップホップ/ラップ・リアリティ番組。ZEE5は本作を「ケーララ初のラップ・リアリティショー」と位置づけており、急速な成長を続けるケーララのヒップホップ・シーンから、新たな才能を発掘することを目的としている。
近年のインドでは、ヒンディー語圏を中心とするデシ・ヒップホップだけでなく、それぞれの地域言語を使ったラップが大きな盛り上がりを見せている。なかでもマラヤーラム語ラップは、ケーララの若者文化と結びつきながら独自のシーンを形成してきた。『Kerala Underground』は、そうした動きをテレビ/OTT型のオーディション・フォーマットへ持ち込んだ番組といえる。
2026年6月30日にはコーチでオープン・オーディションが行われ、そこから選ばれた10人の新進アーティストが参加。パフォーマンスやさまざまな課題、メンターによる指導、脱落ラウンドなどを通して、「Kerala’s ultimate underground champion」の座を競っていく。単純にラップの技術を競うだけではなく、参加者自身の経験や出身コミュニティ、葛藤、野心など、それぞれが「なぜラップするのか」という物語にも焦点を当てることが番組の特徴だ。
番組を支えるのが、現在のマラヤーラム語ヒップホップを代表するアーティストたちである。メンター/指導陣としてダブジー(Dabzee)、インバチ(Imbachi)、MCクーパー(MC Couper)、パリマル・シャイス(Parimal Shais)が参加。司会は俳優、ダンサー、振付師として活動するアーティラ・ラジーヴ(Aathira Rajeev)が務める。
特にダブジーは、映画『Manjummel Boys』の「Illuminati」などを通してマラヤーラム語圏を越えて知られるようになった存在であり、インバチ、MCクーパー、パリマル・シャイスもケーララのインディペンデント・ヒップホップを語るうえで重要なアーティストだ。すでにシーンを切り拓いてきた彼らが、次世代のラッパーを育成する側に回っている点にも『Kerala Underground』の意味がある。
さらに番組内から生まれたオリジナル楽曲は、Zee Music Companyを通じてリリースされる。つまり優勝者を決めて終了するだけのリアリティ番組ではなく、無名のラッパーを実際の音楽市場へ送り出すためのプラットフォームとして設計されている。
これまでインドのラップ・リアリティ番組といえば、MTV『Hustle』シリーズが大きな存在だった。しかし『Kerala Underground』が興味深いのは、全国規模のヒップホップではなく、ケーララという一地域とマラヤーラム語のシーンに徹底して焦点を絞ったことにある。
番組名の「Underground」が示しているように、主役となるのはすでに全国的な知名度を持つスターではなく、ストリートやローカル・コミュニティから登場してくる新しい声だ。実際のケーララ各地を舞台に、ドキュメンタリー的な映像スタイルも取り入れながら、音楽だけでなく、その背景にある地域文化や若者たちのリアルな生活まで映し出そうとしている。
『Kerala Underground』は、単なる「ケーララ版ラップ・オーディション番組」ではない。マラヤーラム語ヒップホップがアンダーグラウンドから巨大OTTプラットフォームへ進出したことを象徴する番組であり、地域発のヒップホップが次の段階へ突入したことを示す作品だ。


