
「Bhoomi 2026」始動、アフサナ・カーンとサイダ・ベグムの「Nuksaan」でキックオフ!!
インドを代表する音楽家デュオ、サリム=スレイマン(Salim-Sulaiman)が展開してきた音楽プロジェクト「Bhoomi」。
その2026年版「Bhoomi 2026」から発表されたキックオフ・ソングが「Nuksaan」だ。
スレイマンに加え、アフサナ・カーン(Afsana Khan)、サイダ・ベグム(Saida Begum)、ハッピー・ライコティ(Happy Raikoti)がクレジットされている。
「Bhoomi」は、スレイマンがインド各地の歌手やミュージシャンと組み、地域音楽や伝統的な歌唱を現代的なサウンドへと接続してきたプロジェクトだ。そのため映画のために作られたサウンドトラックとは異なり、アーティストや地域ごとの音楽的個性を前面に押し出せることが大きな特徴となっている。
「Nuksaan」で中心となるのは、パンジャブ音楽だ。とくに存在感を発揮するのが、アフサナ。彼女は現代パンジャブ音楽を代表する女性シンガーのひとりで、繊細さよりも、感情をむき出しにするような力強いヴォーカルを武器としてきた。「Nuksaan」でも、その特徴的な声が楽曲の感情的な核となっている。
タイトルの「Nuksaan」は、ヒンディー語/ウルドゥー語やパンジャブ語圏でも使われる「損失」「損害」「喪失」といった意味の言葉。恋愛において誰かを愛することによって負う“ダメージ”を思わせるタイトルであり、アフサナの少し荒々しく、痛みを直接叩きつけてくるような歌唱との相性は抜群だ。
さらに重要なのが、サイダ・ベグムの参加である。現代的なパンジャブ・ポップの歌唱だけで完結させるのではなく、異なる世代やスタイルの声を組み合わせることで、スレイマンらしい「伝統と現在を同じ楽曲の中で共存させる」というBhoomiのコンセプトが浮かび上がってくる。
一方、ハッピー・ライコティはパンジャブ映画/音楽シーンで長年活動してきたシンガーソングライター、作詞家。「Nuksaan」に彼が加わったことで、単純にパンジャブ風のサウンドを取り入れたクロスオーバー作品ではなく、現在のパンジャブ音楽シーンそのものとの接続が強くなっている。
音楽的に興味深いのは、伝統的なパンジャブ音楽の情念を残しながら、プロダクションそのものは非常に現代的に整理されていることだ。民族音楽をそのまま保存するのではなく、現在のリスナーが聴くポップ/インディペンデント音楽として再構築する。この方法論こそ、Bhoomiシリーズが継続してきた理由でもある。
そして何より「Nuksaan」の魅力は、洗練されたスレイマンのプロダクションと、決して綺麗に整いすぎない歌声との対比にある。アフサナの声には、パンジャブ音楽特有の土臭さや激情が残されている。その声を過剰にポップ化するのではなく、むしろ中心へ配置しているからこそ、楽曲には現代的でありながら強烈な地域性が生まれている。
「Bhoomi 2026」のスタートを飾る作品として、「Nuksaan」はプロジェクトの方向性を端的に示した一曲と言えるだろう。インドの伝統や地域音楽を「古い音楽」として紹介するのではなく、2026年のポップミュージックとして鳴らすスレイマンがBhoomiで続けてきた試みを、パンジャブ音楽の強烈な“声”によって再提示した楽曲だ。


