
古典音楽とボリウッドの経験が交差する、実力派アーティスト2人の最新コラボ曲「HISAAB」
インドの新世代ポップス・シーンで活動するシンガー、アンチャル・ティヤギ(Aanchal Tyagi)と、映画音楽からインディペンデント・ミュージックまで幅広く手掛けるアビジート・シュリヴァスタワ(Abhijeet Srivastava)によるコラボレーション楽曲「HISAAB」。ヒンディー語で「計算」「勘定」などを意味する言葉をタイトルに冠した作品だ。
アンチャル・ティヤギは、インドの新世代シンガーのひとりとして、ヒンディー語を中心としたポップスを発表してきたアーティスト。現代的なI-Popの潮流に位置する音楽活動を展開し、「Adhoora」や「Dhak Dhak」などの楽曲で知られる。映画のプレイバック・シンガーが長らく中心を占めてきたインド音楽市場において、自身の名義によるオリジナル作品を通じて活動する新しい世代のアーティストといえる。
一方、アビジートは、ボリウッド映画のプレイバック・シンガーとしての活動でも知られ、映画音楽と独立したポップス作品の双方に携わってきた。映画で培われたメロディー表現を自身の楽曲制作にも取り入れ、伝統的なボリウッド・ポップスと現代的なインディー・ポップスをつなぐ存在となっている。
アンチャルはマディヤ・プラデーシュ州インドール出身で、6歳からインド古典音楽の訓練を受け、全インド・ラジオ(AIR)の認定アーティストとしても活動。2022年にはマラーティー語映画『Godavari』の挿入歌「Kojagiri」でプレイバック・シンガーとしてデビューした。その後、ユニバーサル・ミュージック・インディア傘下のIndieA Recordsなどを通じて作品を発表し、シャーシュワト・サチデーヴ(Shashwat Sachdev)との「Paris London Amsterdam」、ベニー・ダヤール(Benny Dayal)との「Jhoome Re」など、ジャンルを横断するコラボレーションでも注目を集めた。
アビジートは、映画『Bharat』(2019)の「Chashni」で注目され、同曲で2020年のMirchi Music Awards新人男性ボーカリスト賞を受賞。そのほか『Mission Mangal』(2019)の「Shaabaashiyaan」や『Haseen Dillruba』(2021)の「Phisal Jaa Tu」などにも参加している。歌手としてだけでなく、作曲家、音楽プロデューサーとしても活動し、映画音楽の枠にとらわれないキャリアを築いてきた。
両者の関係は今回が初めてではない。2022年のアンチャルのシングル「Saajanwa」ではアビジートが作曲とプロデュースを担当。その後も「Buri Nazar」「Doob Rahe」「You’re The One」などで共演を重ね、継続的な音楽的パートナーシップを築いてきた。とりわけ、インド古典音楽を基礎とするアンチャルの歌唱と、映画音楽で経験を積んだアビジートの作曲・プロデュース能力は、二人のコラボレーションを特徴づける要素となっている。
2026年10月8日にユニバーサル・ミュージック・インディアから発表された「HISAAB」は、そうした二人の活動の延長線上にある新曲。ボリウッドの映画音楽とインディペンデント・シーンが明確に分離するのではなく、アーティストが双方を自由に行き来するようになった現在のインド音楽業界を象徴する組み合わせでもある。


