
アイキー・ベリー(Iykki Berry)日本独占インタビュー Part1
インド国内にも、私のことやこのサイトの存在が認知されるようになってきて、多くのアーティストへのインタビューが続々と実現している!!
そして、今回は「NEXT InDoor」を開設してから、定期的に追い続けてきており、「インド音楽ディスクガイド」のフィーメール・ラップの章で取り上げている、タミルを代表するヒップホップ・アーティスト、アイキー・ベリー(Iykki Berry)に日本独占インタビューが実現!!
Q1)わかりやすいようにインドのニッキー・ミナージュやイギー・アイゼアと紹介することがあるのですが、リスナーには、ご自身をどのようなアーティストとして紹介してもらいたいですか?
私は「インド出身のタミル語ヒップホップ・アーティストであり、ラッパー、シンガー、そして音楽を通じてさまざまな境界を打ち破ろうとしているインディペンデント・アーティスト、イッキ・ベリー」と紹介してほしいです。
ニッキー・ミナージュやイギー・アゼリアのようなアーティストを尊敬していますが、すべてのアーティストは、それぞれ独自のアイデンティティによって評価されるべきだと思っています。
もちろん、ほかのアーティストとの比較が、新しいアーティストを知るきっかけになることもあります。でも、私は誰かの「インド版」になりたいわけではありません。「最初のイッキ・ベリー」になりたいんです。
私は自分の言語、文化、経験、そして個性を背負って活動しています。私の夢は、タミル語のヒップホップを世界に届けること。そして、これまでタミル語を一度も聞いたことがない人たちにも、この言語に興味を持ってもらうことです。
Q2)Desi Trillを通じたリコ・ダン(Rico Dann)とのコラボレーションは、どのように実現したのでしょうか? また、制作で特に印象に残っていることはありますか?
このコラボレーションは、Desi TrillのCEOであるシャブズ(Shabs)さんを通じて実現しました。
彼は、南アジア出身でパワフルかつエネルギッシュな女性アーティストを探していたとき、最初に私の名前が挙がったと話してくれました。そして、私の作品を聴いて、「ぜひこのアーティストとコラボレーションしたい」と確信したそうです。
それを本人から直接聞けたことは、本当に特別な経験でした。
ただ、今回の経験が忘れられないものになったのには、もうひとつ理由があります。
実は5年前、私は自分の英語楽曲を収録したCDを持ってイギリスへ渡りました。ユニバーサル・ミュージック、ソニー、ワーナーといった大手レコード会社に、自分の音楽を売り込みたかったんです。
でも、音楽業界に知り合いが誰もいなかった私は、建物の中に入ることすらできませんでした。
建物の外に立って、警備員に「どうすれば自分の音楽を提出できますか?」と尋ねていたんです。でも、招待された人しか中には入れませんでした。
それから5年後、Desi Trillの撮影を終えたあと、ある集まりのために送られてきた場所を見て驚きました。
なんと、そこは5年前に私が入ることすらできなかった、あのユニバーサル・ミュージックの建物だったんです。
今度の私は、自分のCDを抱えて外で待っている無名のアーティストではありませんでした。正式に招待されて建物の中に入り、シャブズさんが私を「世界が目撃するべきアーティスト」として紹介してくれたんです。
その瞬間、諦めずに努力を続けることが、どれほど大きな意味を持つのかを改めて実感しました。
私の経験から学んだのは、何かを始めるために、必ずしも人脈が必要なわけではないということです。
大切なのは、創作を続けること。自分の作品を信じること。そして、たとえ目の前の扉が開かなくても、挑戦し続けることです。
すべてのインディペンデント・アーティスト、とりわけ自分の道を切り開こうとしている女性たちに伝えたいことがあります。
閉ざされた扉を前にしても、自分の価値を疑わないでください。自分の才能を磨き続けてください。
かつて入ることすらできなかった場所が、いつか、あなたがずっと信じてきたアーティストとして迎え入れてくれる日が来るかもしれません。
Q3)「Papi」ではラップよりも歌唱に重点が置かれています。デビュー当時はポップスも多かったと記憶しています。これは原点回帰なのでしょうか? また、今後もポップスやR&Bにも挑戦したいと考えていますか?
私はこれを原点回帰とは考えていません。そもそも、最初から自分をひとつのジャンルに限定したいと思ったことがないからです。
私は新しい音楽を探求すること、自分自身に挑戦すること、そしてアーティストとしての限界を押し広げていくことが大好きなんです。
私にとってアーティストであるということは、恐れることなく自由に実験できるということでもあります。
「Papi」では、ポップスとアマピアノを融合させた「ポピアノ(Popiano)」というスタイルに挑戦したいと思いました。これまでとは異なるリズムやサウンド、歌唱スタイルを試す機会でもあったんです。
実際、私はこれまでもさまざまなジャンルに挑戦してきました。
デビュー曲の「Enna Paathathum」はポップスでしたし、「Neeyum Naanum」ではポップスとディスコを取り入れました。「Yela」にはファンクの要素があります。
「Thalayaatti Bommai」ではダンスホールやアフロ系のサウンドを探求し、「Bum Bum」ではブラジルのカーニバルを思わせるファンクを取り入れました。
一方、「Ithihasam」「Thunder」「Jealousy」では、私のヒップホップ・アーティストとしての側面を表現しています。
「Block」ではUKグライムに影響を受けたビートを使用し、「Thakkali」ではドリルに挑戦しました。
最近の楽曲「KulaNagini」では、インドの民族音楽的な要素にEDMとヒップホップを融合させています。
ですから、私にとって重要なのは、何かに戻ることでも、何かから離れることでもありません。
「自分には、ほかにどんなことができるのだろう?」と、新しい可能性を発見していくことなんです。
私はさまざまな文化やジャンルのサウンドに常に興味を持っていますし、それらを取り入れることを恐れていません。
もちろん、今後はポップスやR&Bにも、もっと挑戦してみたいです。
私は、ひとつのサウンドだけで認識されるアーティストではなく、多彩な表現力を持つアーティストとして知ってもらいたいと思っています。
私の音楽は、あらゆるジェンダー、あらゆる年齢層、あらゆる国の人々、そしてすべての人類のためにあります。
国境も、境界線もありません。
私は時代を超えていく存在なんです。
Q4)日本のラッパー、ダニー・ジン(Danny Jin)との「Bosu」は、どのような経緯で実現したのでしょうか?
ヒップホップの最も素晴らしいところのひとつは、異なる言語を話す人々でも、同じカルチャーやエネルギーを共有することでつながれるという点だと思います。
ダニー・ジンとの「Bosu」でのコラボレーションは、ヒップホップへの共通した愛情を通じて、異なるふたつの文化的アイデンティティを結びつけるものでした。
私にとって国際的なコラボレーションが特別なのは、一緒に何かを作るために、お互いが同じになる必要はないということです。
むしろ、その違いこそが音楽を面白くするんです。
タミル語と日本語は、まったく異なる言語です。でも、リズムや姿勢、表現、感情は、言葉の壁を越えて伝わります。
日本にいる誰かが私の音楽に共感してくれること。そして、タミル・ナードゥ州にいる誰かが、世界の別の地域のアーティストの音楽に共感すること。
私は、そうしたつながりが生まれることを素晴らしいと思っています。
そして、自分の音楽を通じて、そのようなつながりを作っていきたいんです。
Q5. 「Bosu」に登場する「Mich Akero!」というフレーズは、どんな意味を持っているのでしょうか?
「Mich Akero!」は、楽曲に独自のキャラクターを与え、印象的なものにしているフレーズのひとつです。
ヒップホップの魅力は、言語や音、スラング、さまざまな表現を自由に組み合わせることで、人々の記憶に残るものを生み出せるところにあると思います。
ときには、ひとつのフレーズが単なる歌詞以上の意味を持ち、その楽曲の姿勢やアイデンティティそのものになることもあります。
異文化が交わる音楽について、私が特に好きなのは、たとえ歌詞のすべてを理解できなくても、ある表現が人々の注意を引きつけられるということです。
それこそが音楽の美しさだと思います。
人々の好奇心を刺激し、体を動かし、記憶に残る何かを与えてくれるんです。

【アイキー・ベリー / Iykki Berry】
インド南部タミル・ナードゥ州タンジャーヴール出身のラッパー、シンガー、ソングライター。本名はアイキャ・カマラージ(Iykya Kamaraj)。医師としての資格を持ち、美容医療の分野でも活動するという異色の経歴を持つ、タミル語ヒップホップ・シーンを代表する女性アーティストのひとり。幼少期から音楽に親しみ、歌手のラミヤ・NSK(Ramya NSK)に師事した後、世界的な映画音楽作曲家A.R.ラフマーンが設立した音楽教育機関KM Music Conservatoryで専門的な音楽教育を受けた。2016年頃から本格的に音楽活動を開始し、当初はソングライティングを中心に活動。その後、ヒップホップを自身の表現手段として取り入れ、タミル語と英語を駆使した独自のスタイルを確立していった。2017年には、タミル・ナードゥ州の伝統行事ジャッリカットゥを支持する運動に関連した楽曲「Pride of Thamizhan」を発表。2019年の「Enna Paathathum」で注目を集め、2020年には英語楽曲を収録したアルバム『Mesense 1991』をリリースした。2021年には、俳優カマル・ハーサンが司会を務める人気リアリティ番組『Bigg Boss Tamil』シーズン5に出演。音楽ファン以外にもその存在を広く知られるようになった。その後も、デイヴ・メジャー(Dev Major)との「Yela」、マラヤーラム語ラッパーのティルマリ(ThirumaLi)を迎えた「Rani」、タミル民謡歌手チンナー・ポンヌー(Chinna Ponnu)との「Thalayaatti Bommai」などを発表。ヒップホップを軸にポップス、ファンク、ダンスホール、エレクトロニック・ミュージックなどを横断しながら、南インドの伝統的な音楽文化と現代的なサウンドを融合させてきた。2024年には、タミル文化への誇りや逆境に立ち向かう力をテーマにした「Ithihasam」を発表。男性中心の傾向が強かったヒップホップ・シーンにおいて、女性アーティストとして独自の存在感を築いている。また、音楽活動と並行して医療支援や社会貢献活動にも取り組んできた。タミル語圏に根ざした文化的アイデンティティを持ちながら、国際的な活動の幅も広げている。


