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サイ・アビヤンカルが“失恋”をネカディブからアクティブに「Radhimaa」

「Katchi Sera」「Aasa Kooda」の世界的なバイラルヒットによって、タミルのインディーズ・シーンを代表する若手へと一気に駆け上がったサイ・アビヤンカル(Sai Abhyankkar)。そんな彼が2026年8月24日に新曲「Radhimaa」をThink Indieからリリースした。今回はサイ自身が作曲、歌唱、プロデュースを担当し、作詞をヴィヴェーク(Vivek)が手掛けている。

これまで「Aasa Kooda」などで恋愛の高揚感をポップに表現してきたサイだが、「Radhimaa」のテーマは失恋。本人もリリース前から「peppy break-up number」と表現しており、結婚をテーマにした前作「Pavazha Malli」とは正反対の方向へ進んだ作品となった。

とはいえ、しっとりと失恋を嘆くバラードではないところが興味深い。

歌詞では、主人公が「Radhimaa」と呼ぶ女性に振り回され、彼女に去られてしまった悲しみや未練を語っていく。「こんなに愛していたのに、なぜ自分を置いていったのか」という失恋ソングの王道ともいえる感情が描かれる一方、それをコミカルな言葉遣いやキャッチーなフレーズで包み込んでいる。悲しい出来事そのものを深刻に描くのではなく、失恋さえ踊れるポップソングへ変えてしまうのが「Radhimaa」の特徴だ。

サウンド面でも、サイ・アビヤンカルらしい情報量の多さが際立つ。シンセ、キーボード、ベースに加え、エレクトリック/アコースティック・ギター、ヴァイオリン、タブラ、フルート、サックス、ブルブル・タラング、伝統的な弦楽器、さらにコーラスまで投入。サイ自身もシンセ、鍵盤、ベースだけでなくタブラを担当している。

つまり「Radhimaa」は、単純なエレクトロ・ポップではない。インド的なリズムや生楽器の音色を残しながら、それらを現代的なポップ・プロダクションの中へ大胆に放り込んでいる。このローカルな音楽要素とSNS時代のキャッチーさを共存させる感覚こそ、「Katchi Sera」以降のサイが得意としてきたスタイルでもある。

ヴォーカル面ではナルギス(Nargis)とアシュナ(Ashna)が女性ヴォーカルとして参加し、Semvi、Rumyによる追加男性ヴォーカル、さらにThe Indian Choral Ensembleらによるバック・コーラスも加わっている。サイのソロ名義作品でありながら、実際の音像はかなり多層的だ。

ミュージックビデオには、近年テルグ/タミル映画で注目を集める女優バーギャシュリー・ボールセ(Bhagyashri Borse)が出演。サイ本人と共演している。監督は「Aasa Kooda」「Vizhi Veekura」「Pavazha Malli」でもサイと組んできたテジョ・バーラドワージ(Thejo Bharathwaj)。さらに撮影を『Kumbalangi Nights』『Manjummel Boys』などで知られるシャイジュ・カリド(Shyju Khalid)が担当しており、インディー楽曲でありながら映画作品並みのスタッフが集結した。

サイはすでに映画音楽の世界にも本格進出しているが、「Radhimaa」で改めて面白いのは、映画音楽へ軸足を完全に移すのではなく、Think Indieでの独立したポップスターとしての活動を並行していることだ。「Katchi Sera」「Aasa Kooda」から続く彼のインディー作品は、楽曲だけでなく映像、ダンス、ファッションまで含めた総合的なポップ・カルチャーとして成立している。

失恋を悲劇ではなく、ユーモアとリズムによって“ハッピーな失恋ソング”へ変換した「Radhimaa」。伝統楽器から最新のポップ・プロダクションまでを軽々と横断するサイ・アビヤンカルのセンスが凝縮された、彼らしい新世代タミル・ポップだ。

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