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コラム:インド・ディスク文化復活の兆し:第1回/レコード編

世界共通の危機ともいうべきかもしれないが、音楽ストリーミングサービスの普及によって、ディスク文化というのは氷河期に突入している。CDは一般ユーザーが手にするというよりも、完全にファンアイテム化してしまった。

インドでも2010年代に入ると、ストリーミングサービスが主流となり、アーティストもCDをほとんどリリースしなくなってしまったし、最大手のサレガマもCDからは撤退してしまった。

ただサレガマやソニー・ミュージックは、タミル語映画のサントラに関しては、今でも主要作品のCD化を続けており、『レオ:ブラッディ・スウィート』や『Thug Life』、『Coolie』など、最近の作品もリリースされている。ちなみにタミル語映画のサントラCDに関しては、『響け!情熱のムリダンガム』を配給したことでも知られている、南インド料理店なんどりさんでも、いつくか購入が可能だ。

https://shop.nandri-tokyo.com/categories/1958343

とはいえ、全体的に見れば、やはりインドは海賊盤を除けば、古典やジャズ、そして南インドの一部の映画サントラが出回っているだけで、衰退しているとしか言いようがない。

日本の音楽ディスク文化もそこまで変わりはないが、世界的なレトロブームとアイドルやK-POPのグッズと化したCDによって、なんとかギリギリ持ち直している状況だ。

実はインドも同じ道を辿ろうとしている。ただ、それは悪い意味ではない。

ただでさえ死んでいたインドのディスク文化だけに、復活の兆しが見えてきたことは、とりあえず良いことだといえるからだ。

今回はレコードに焦点を当ててみよう!!

昨今のレトロブームで、レコードの需要が再加熱し始めた。それはインドでも同じ流れを受けている。

音楽としては良いのか悪いのかは別として、聴かないとしてもインテリア的な感覚でジャケ買いされることも多くなり、にわかレトロファンが、なんだかよくわからないけどレコードを買うことで、需要がさらに高まっている。

そのため、再生できないけど、レコードと同じ形をしているLDがインテリアとして人気になっていることもあるが、それは置いておいて。

インドの場合は、レトロブームはレトロブームでも、ジャケ買いして飾る目的の人は少なく、シンプルに音楽を楽しみたいから購入する、通好みのアイテムとして再加熱しているのだ。

価格帯的に、貧困層や一般的な所得の人が手を出せるようなアイテムではないため、地方にはほとんどレコードショップは存在しておらず、あったとしても、本当に中古盤が置いてあるといった感じだ。

インドにおいてレコードの存在は、もはや過去のものだという認識があったのだが、都心に住む富裕層や、少し裕福な中間層の間で、レコードブームが起きている。

一般ユーザーはストリーミングサービスで音楽を聴き、ちょっと余裕のあるユーザーは、レコードで音楽をたしなむという、両極端な市場が2023年頃から徐々に構築されつつある。

海外アーティストの名盤や、アリアナ・グランデやビヨンセなどの現代アーティストの新譜レコードをアメリカやヨーロッパ経由で輸入して聴く流れがある一方で、インドの名盤を求めるユーザー向けには、70年代以降の映画のサントラやキショール・クマール、R.D.バーマン、ナジア・ハーサンといった、アーティスのベスト盤が復刻版として、レコードで再リリースされることも多くなってきた。

そしておもしろいことに、

新作ボリウッド映画のサントラCDはリリースされなくなったままだが、ここ数年で新作映画のサントラがレコードだけでリリースされるという不思議な状況になっているのだ。

例えば、『ドゥームダーム』や『チャムキラ』といった比較的新しいNetflix映画のサントラはレコードだけでリリースされているし、劇場映画でも『Runway 34』『Drishyam 2』が一緒になった盤やインド全土でヒットした『プシュパ 覚醒』のヒンディー語盤もリリースされている。

去年リリースされた、インド映画の金字塔『炎』(1975)の公開50周年記念盤にいたっては、完全にコレクター向けの超豪華仕様となっていて、約3万円で販売されている。

これはかなり特殊な動きではないだろうか……。

もちろん、CDで発売されないけど、レコードだけで発売される~ということが無いわけではないが、インドの場合は、そういった限定思考というよりも、求めている人がいるからリリースするというマインドが若干強いようにも感じる。

レコードブームは今後も続いていくだろうが、都会から地方にブームが分散されていくように、もっと一般的にディスクで音楽を楽しみたい風潮が強くなったとしたら、レコードよりも流通が簡単なCD文化も復活するかもしれないのだ。

とりあえず、あと2~3年の動きを見てみたいと思う。

レコード市場の動きに関しては、今後も調査していくが、次回はK-POPブームがもたらす影響について。

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