シッダーント・チャトゥルヴェーディー主演作『Yudhra』ディズニーシンガーも参加のサントラレビュー
シュリデヴィの遺作となってしまった『Mom』(2017)以来、7年ぶりのRavi Udyawar監督作品であり、『ガリーボーイ』や『そして、見失ったものは』などシッダーント・チャトゥルヴェーディー、『マスター 先生が来る!』などに出演する南インド女優でもありヒンディー語映画にも出演するマーラヴィカ・モーハナン、そして『KILL』の残虐なキャラクターが記憶に新しいラーガヴ・ジュヤールなどが出演するアクション・スリラー『Yudhra』が9月20日から公開に。
シッダーントが男を串刺しにするシーンなどもあって、バイオレンス色の強い作品となっているのみも特徴的だ。
関係ないがシッダーントに、どことなくウィル・スミス感を感じるのは私だけだろうか?
小出しで作中曲のシングルカットとミュージックビデオが公開されていたが、サウンドトラックも9月17日にリリースとなった。
収録曲は3曲と、やや少なめではあるが、近年のボリウッドはサウンドトラック的な使用曲を含めると7曲ほどあってもダンスシーンは2~3曲しかないというのが定番になりつつある。
さっそく楽曲を紹介していこう。
1)Sohni Lagdi
まず注目すべき点は、Ne-Yoなどとも共演したことのあるイギリスのR&Bシンガーで、リリー・ジェームズ主演のディズニー実写版『シンデレラ』(2015)の「ストロング」を歌っていたソンナ・レレが女性ボーカルとして参加していることだ。
作曲はアラヤ・F、サイーフ・アリー・カーン主演作『Jawaani Jaaneman』(2020)などの楽曲も手掛けたプレム&ハルディープ。
ソンナは、同じくプレム&ハルディープが手掛けた非映画曲の「Kaise Juda Rahein」に参加していたこともあり、その繋がりで、はれてインド映画音楽デビューを果たしたのだ。
そして男性パートはジャズ・ダミ。
ジャズといえば『キ&カ ~彼女と彼~』(2016)以降は、インド映画音楽からは離れていただけに、8年ぶりのカムバックとなっているのも注目点である。
曲自体はザ・ダンスナンバー!と言ったところだが、気になるのはミュージックビデオに映っているステージに『アキラ』の金田のバイクらしきオブジェがあることだ。
インドでは、アメコミもそうだが、配信でタイムリーに新作が観られるようになったことで、日本のアニメも人気急上昇中。アーティストたちも日本のアニメ・漫画好きを主張するなど、オタク文化が浸透しつつあるものの、ダンスステージにも?!と思わせるインパクトである。
2)Saathiya
アヴァンティカ主演のディズニーチャンネル映画『スピン』やAmazonプライムドラマ「Bandish Bandits」などの楽曲に参加する、ヒンドゥスターニーの古典音楽プレイバックシンガーのプラーティーバ・シン・バーゲルと、ボリウッドでは同じみのシンガーであり、プロデューサーとしても知られるヴィシャール・ミシュラによるラブソング。
コーラスとしてプラークリティ・ギリ、Madhura Paranjape、Darshana Menoといった若手シンガーたちも参加している。
作曲は2000年以降のボリウッド映画音楽を支え、近年は「Bandish Bandits」の音楽監督でもあった、シャンカール・イーサーン・ロイ(シャンカール・マハデーヴァン、イーサーン・ノーラニ、ロイ・メンドーサにより音楽ユニット)が務めている。
ミュージックビデオを観て、まず思うことは、シッダーント・チャトゥルヴェーディーは、とにかくキスシーンが多いということ。
『Gehraiyaan』でも、ディーピカー・パードゥコーンとやたらキスをしていた印象が残っている……。
この曲単体だとラブソングに違いないのだが、作中の場合は、また違った余韻を残すものとなっており、この演出は『KILL』に酷似しているといえるだろう。
3)Hatt Jaa Baaju
シッダーント・チャトゥルヴェーディーとラーガヴ・ジュヤールによる精神世界でのダンス対決といったところだろうか。
作曲は「Saathiya」と同じくシャンカール・イーサーン・ロイ。
ヴィシャール・ダッドラニがメインボーカルを担当しているだけのことはあり、ズッシリした重低音を感じさせる。
またNetflix映画『アーチーズ』(2023)の「Dhishoom Dhishoom」に参加していたインディーズアーティストのケリー・デリマが女性パートを担当しているのにも注目してもらいたい。
コーラスには「The Voice」に出演して話題になったShrinidhi Ghatate、ラーヴェー・ミシュラなどが参加している。
ミュージックビデオでは、さすがプロのダンサーであり、ダンス系オーディションの審査員をしているラーガヴだけのことはあり、華麗なステップが披露されている。