
『わたしの聖なるインド』ノウシーン・ハーン監督インタビュー
6月6日より全国順次公開のドキュメンタリー映画『わたしの聖なるインド』
同作の監督・撮影・編集を務めたノウシーン・ハーン(Nowshera Khan)にインタビューすることができた。
社会派な質問をするメディアが多いなか、エンタメとしての角度から質問してみた。
というか、2023年の作品で、すでに海外メディアのインタビューが多数あるのに、同じような質問するのも変だと思う。
私は、いつも「聞かれたことがないようなことを聞いてくれた」と喜んでもらえることが多いので、今回もそのスタンスでやってます。
■エンディングにイクバル・バーノ(Iqbal Bano)の「Hum Dekhenge (Hum Dekhen Ge)」が使用されていましたが、この曲はアンセムとして、今も歌われ続けていますし、ヒンドゥーナショナリズムに偏ったプロパガンダ作品ではありますが『The Kashmir Files』(2022)でも印象的に使用されていました。79年代にイラン革命用に作られたこの曲がアンセムとして生き続ける理由は何だと思いますか?また原曲ではなく、ライブバージョンを使用されていたのは、版権的な理由ですか?
ノウシーン)
「Hum Dekhenge (Hum Dekhen Ge)」は、今も色あせないアンセムとして、ムスリムの人たちの心にあり続けます。
ムスリムを意図的に悪く描いた作品に関しては、作品を観ること自体をボイコットしているのですが、『The Kashmir Files』に関しては、「Hum Dekhenge (Hum Dekhen Ge)」を都合のいいように使用し、ヒンドゥー教徒が抑圧を受けているかのような表現になっていました。
私の場合は、自分でドキュメンタリーを撮り、真実を発信することで、そういった間違った情報の拡散やプロバガンダに対抗しているのです。
曲がライブバージョンなのは、その通り、版権の理由です。
■監督自身も宗教と距離を置いていたことがあったと言われていましたが、ドラマ「女子高生は泣かない(BIG GIRLS DON’T CRY)」のエピソードのなかに、自分が自分であることやインドに生きる女性としての自信を持つ一方で、イスラム系の名前だと海外の学校に進学し辛いという理由から名前を変えていたというものがありました。そういった同じ境遇にある人に何かアドバイスはありますか?
ノウシーン)
すみません、その作品は観ていません。
改名までするというのは、ムスリムの間でも頻繁にあることではないのですが、そういった悩みのある人に、今の私から言えることは、意見をしっかり持つことと、無理に周りに適合しようとしないことです。
自分の名前というのは大切な意味があったりするものですから、そこに誇りをもって、恥ずかしいと思わないでもらいたいです。
■作中で、インド映画のなかでもムスリムが敵や裏切り者として描かれることが多いということを、1997年の『Border』を引用されて説明されていましたし、最近も『The Bengal Files』(2025)のようにムスリム側が意図的に残忍に描かれている作品はいくつかありました。ただ一方で、『SOORYAVANSHI/スーリヤヴァンシー』(2021)では、敵はあくまで過激派のテロリストであって、ムスリムは悪くないという主張や、ドラマ「インド警察 : テロとの闘い」では、ムスリムの青年が過激派に染まってしまう環境と過程を描くことで、ムスリムとテロ行為は無関係であることを強く主張した作品もいくつかあります。これはバランス良く描かれていた作品は何か思いつきますか?(「映画秘宝」にも掲載質問)
ノウシーン)
『SOORYAVANSHI/スーリヤヴァンシー』と「インド警察 : テロとの闘い」はローヒト・シェッティ作品ですね。
私はゾーヤー・アクタル監督の『ガリーボーイ』(2019)という作品が好きです。その理由は、主人公はムスリムではあるのだけど、それが特別なものとして描かれておらず、偶然、主人公がムスリムだっただけだという、自然なかたちで描かれていることです。
『The Kashmir Files』や『The Bengal Files』のように、圧倒的に残忍に描かれているのは、論外なのですが、逆に「これをすれば良いムスリム」だという描かれ方も、あまり好きではありません。
ボリウッドも以前と比べれば、ムスリムを悪く描かなくはなってきましたが、例えば『ドゥランダル作戦』(2025)のような超大作であっても、音楽やアクションで中和されているだけで、実はプロバガンダ的な作品はまだまだありますね。

■女性たちが平和的な抗議をしていても、ムスリム側にもイメージを悪くしてしまうような暴力的な組織やテロ行為を行う過激派などもいますが、そういった、本来仲間であるはずの人たちの脅威には、どう対処されているのでしょうか?
ノウシーン)
映画の冒頭で2人の男性が異なる意見をぶつけ合っていますが、ひとりはムスリムの団結を強める抗議活動だと主張していたのに対して、学生リーダーの方は、ヒンドゥーとムスリムだけの問題ではないし、宗教だけの問題でもない。マイノリティ全体、憲法の問題であって、それに対しての抗議運動をするべきだと主張していました。
実はその時点でムスリムVSヒンドゥーという構図ではないという意見が固まり、この抗議活動は、連帯、団結、そして愛というようなマインドに向かっていきました。
そのため抗議運動中に、内側から、何か問題を起こす人が出てきて、それによって足を引っ張られたり、ネガティブな報道がされてしまうといった事態にはなりませんでした。
■インタビューさせていただいたインドの方全員に聞いている質問ですが、好きなインド音楽を教えてください。
ノウシーン)
●ソヌー・シン(Sonu Singh) 「Unke Andaz E Karam」
★カッワーリーの重鎮
●ヌスラト・ファテー・アリー・ハーン(Nusrat Fateh Ali Khan)の曲全般
ジャンルとしてカッワーリーが好きなので、気分によって、いろんなスタイルのカッワーリーを聴いています。

【『わたしの聖なるインド』 作品情報】
原題:Land of My Dreams
監督・撮影・編集:ノウシーン・ハーン
音楽:クシュ・アシェール
宣伝:リガード 宣伝美術:中野香 配給:きろくびと
インド|2023|ヒンディー語、英語|74 分
HP:https://landofmydreams-film.com


