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ドラマ「フォー・モア・ショット・プリーズ!」S4音楽特集

インドや欧米では12月に配信開始された「フォー・モア・ショット・プリーズ!」のシーズン4が、やっと日本でも配信開始になった。今作がファイナル・シーズンとなるといわれているのだが、なぜか今シーズンのみ日本語吹替えが制作されていない。前シーズンまで存在していたものが無くなるのは不自然だ。配信まで時間をかけたのは吹替えを制作しているからだと思っていたが、単純に日本需要がなかったからだろう。

はっきり言って「フォー・モア・ショット・プリーズ!」は、インドドラマのなかで最高傑作と言っても過言ではない。もちろんカジュアルすぎる部分はあるし、どうしても尺的に消化不良な問題も多かったりもするが、それをふまえても良いバランスで構成されているし、何よりインドの女性をテーマとしていながら、全世界に共通する課題を違和感なく描いているからだ。

「セックス・アンド・ザ・シティ」のように、NYライフがキラキラした毎日ではないし、ある程度誇張されている部分はあるものの、インドを知るうえで、インドの宗教や文化といった、土着的でステレオタイプなものを決して前に押し出さずに、それでインドを表現することに逃げていないのが潔いし、俯瞰的なインドの美しさと未来を見せてくれる。だからこそ、現在のインドマインドを描いた作品として最高傑作といえるのだ。

前シーズンまで各10話構成であったが、今シーズンは7話しかないし、突然ダミーニの兄アッシュがレギュラー化するなど、あからさまなテコ入れは感じられるものの、ファイナル・シーズンということもあり、過去シーズンの回想や名曲アレンジを見事なタイミングで挿入してくるのには、涙なしには観ていられない。

「フォー・モア・ショット・プリーズ!」が、完結というのは悲しいものの、4人の旅の終着点でありながらも、新たな出発として前向きな着地点。

シーズン3のラストで、心のよりどころで、出会った聖地ともいえるトラックバーを失った4人。そこから約4年が経過した。つまり、シーズン3が配信されたのが、2022年だったこともあり、ほぼリアルタイムに時間が進んだことになっているのだ。

シーズン3のラストでミヒルにプロポーズしたシディは、無事にミヒルと結婚することに。インドとアメリカを行き来するミヒルと距離や不安を感じたり、なんだかんだはありつつも、このふたりの心の繋がりには安心させられる。ところで、スタンダップを本格的に学ぶって話どうなったんだ??

バイセクシャルのウマンは、障害を乗り越えて結ばれたはずのサマラとの結婚から逃げた過去を引きずり、新たな恋に消極的で、隙間を埋めるために男性のショーンと付き合っていた時期もあったり、仕事で気を紛らせていたが、新たな恋をようやく前進させることになるが、対等な関係性を重視したいという想いが強いことから、自然とブレーキをかけてしまう。

ダミーニは、シーズン2でジェーと付き合う前に、産婦人科医アーミルと関係をもち、子どもを授かったが流産を経験。そんなダミーニを支えてきたジェーも、幼馴染のダナンジャイと浮気したことが決定打となり、別れることに。心の繋がりは維持しつつも、愛は見失ってしまう。ダミーニもウマン同様に仕事で気を紛らわし、ポッドキャスト「DEEfiant」(反骨日記)を開始し、ジャーナリストとして再出発を果たすが、偶然にもジェーと再会し、自分がジェーを求め続けていたことを再確認する。

アンジャナは、様々な恋を経験しながらも、シーズン3で元夫のヴァルンと復縁しそうになり、再び夫婦生活に戻れると期待したものの、ヴァルンは妻のカーヴィヤを選び、再び去ってしまった。娘のアーリヤも成長し、子育てもひと段落といったところで、恋愛に関しては4人のなかで一番積極的に。仕事の繋がりで知り合ったローハンとの関係を大切に深めていく。途中、サウナで偶然アルジュンと再会があったりしつつも……。

ちなみにアーリヤもすっかりティーンエイジャーになっており、アンジャナの恋人を見定めるなど、大人びた一面もみせるが、実はシーズン3まで演じていたジア・ラキアーニではなく、シヴィカ・リシが演じている。ほかにもカーヴィヤとヴァルンは登場しないなど、アンジャナ周りは、割とすっきり整理されていたし、全体的に”結婚”というものが、良くも悪くも、多種多様な区切りとして強調されていると感じた。

Netflixドラマ「クラス」のアイシャ・カンガー(Aisha Kanga)など、新世代の俳優も出演しているなど、Z世代版のスピンオフの可能性もチラつかせているのか??と思うシーンもちらほら。

さて、ここからは音楽について!!

冒頭からシディとミヒルの結婚式ということで、「フォー・モア・ショット・プリーズ!」にとって、おそらく初めてとなる明確なダンスシーンで使用されているのが「Halla Gulla」だ。

プレイバックシンガーとして活躍しながら、2021年からはインディーズ・アーティストとしても活躍するシュレヤ・ジャイン(Shreya Jain)と、「Amazonプライムコンテンツリリース2024」のテーマソング「Are You Ready Now」やNetflixドラマ「ザ・ロイヤルズ」の「Who Rules The World」などに参加していたスークリティ・バルドワージ(Sukriti Bhardwaj)の歌声をシンクロさせている。

どちらのアーティストも古典と現代ポップフュージョンを得意とするアーティストだけのことはあり、インドの結婚式らしいビートを維持しつつもポップ色も強調。ハイテンポな『あの時にもう一度』(2016)の「Nachde Ne Saare」のようなテイストに仕上がった。ダミーニ役のサヤーニ・グプタが出演していた作品ということもあり、少し意識しているのか??

今シーズンに限ったことではないが、サントラに収録されていない曲やスコア、フルバージョンが制作されていないものがいくつか存在しており、Achint Thakkarによる「Hip Hop Sex」や 本作の音楽監督でもあるマイキー・マクレアリー(Mikey McCleary)による「Kill Me Now」、「Are You Happy Now」といった曲が使用されている。配信もされていないため、気になる人はエンドロールの音楽クレジットで確認してもらいたい。

サントラの曲順が使用順ではないため、説明が交差することになるが、2曲目の「Befikri」は、シディとアッシュの広告動画がバズったことで、友達みんな連れてのバンコク出張で使用されていたものだが、ここでジョニタ・ガンディ(Jonita Gandhi)と、Amazonプライムドラマでいったら「コール・ミー・ベイ 〜お金じゃ買えない私の幸せ〜」や「踊る!ワックガールズ」のサントラに参加してきたJOHとRUUHが参加。「フォー・モア・ショット・プリーズ!」のサントラへの参加は、ジョニタ含め初めてだが、ホームを離れた異国にある特有の浮遊感を見事に演出。

ちなみにバンコクの結婚式とパーティを間違って参加してしまった4人が「ボリウッド!ボリウッド!」という掛け声につられて、ダンスパーティに発展する流れで使用されていた「Sawatdee Kah」は、サントラには収録されていないが、タイ系インド人アーティストで、『Race3』(2018)の「Saansain Hui Dhuaan Dhuaan」や『ABCD 2』(2016)の「Naach Meri Jaan」(2016)などにも参加していたリミ・ニーク(Rimi Nique)によるもので、現在はバンコクを拠点にRemeeとして活動している。

3曲目の「Na Jaanu Main」は、ウクレレのサウンドに包まれた優しい楽曲。ウマンがマッチングアプリを通して出会ったアーティストのドゥボリが演奏するシーンに使用されているが、トゥボリ役を演じている女優兼シンガーソングライター、ジャズ・ポップバンドManu and Chowのメンバーでもあるプラビータ・ボルタークル(Plabita Borthakur)本人が歌っている。

4曲目の「Lost In This Feeling」は、第2話でアンジャナがローハンと心を通わせるシーンで使用されている。ここで「フォー・モア・ショット・プリーズ!」のサントラらしいというべきか、今までにもナタニア(Natania)サーチ(Saachi)といったインド国内でも知られていなかったような新進気鋭のインディーズアーティストを積極的に参加させる側面がやっと現れ、2024年にイルファナ(Irfana)と「Djanna」をリリースした、サンプリティ(Sampriti)と、S3の「So Called Home」にも参加していたジェーデン・マスキー(Jaden Maskie)によるセッションとなっている。

5曲目「Kainth Kudi」は、ラジャット・シャルマ(Rajat Sharma)スーパティ・ラジャン(Supati Ranjan)といった、土着感あふれる古典アーティストとS1の「Turn It Up」、S2の「Lollipop」にも参加していた、民俗音楽と現代ラップを融合させた、インド初の女性フォークラッパーと言われているピンキー・マイダサーニー(Pinky Maidasani)をぶつけることで化学変化を試みた実験的な楽曲だ。短い曲でありながらも、印象に強く残る。

6曲目「Daastaan」は、新進気鋭のシンガーソングライターで、ディーノ・ジェームズ(Dino James)が2022年にリリースしたアルバム「D」に収録の「Jealous」に参加した、カプリラ(Kaprila)によるソロ。カプリラにとって、映画やドラマのサントラに参加するのは、今回が初めてとなる。ちなみにカプリラは、サントラには収録されていないが「Can’t Live Without You」も歌っている。

7曲目からは、絶対泣かせにきているズルい楽曲が続く。「Kiss Me Like Stranger」、「Sixteen」、「Myself」といった過去シーズンの名曲も随所に配置されているが、再構築版は、とにかく泣ける!!

まずは「I Don’t Do Love Anymore (Reprise Ver)」は、ミダ・サヒ(Medha Sahi)の名曲で、S1の代表曲のひとつ。これまでにも随所で使用されてきていたが、ここにきて、優しさに加えて、切なさも強調したかのようなマイキーによめギターのメロディが、6年間の4人の歩みをフラッシュバックさせる。とくにダミーニとジェーの微妙な心の距離感と葛藤を表現するうえで、無くてはならない曲だ。

8曲目はナタニアによるS3の「On My Way」を再構築し、ラップパートを追加した「On My Way (Reprise Ver)」となっており、W.i.S.H.のゾーこと、ゾーイ・シッダース(Zoe Siddharth)をメインヴォーカルに置くことで、ハイテンポでポップに仕上げた。ゾーは、S2の「Warning Signs」やS3「Demons」にも参加。

そしてラストを飾る9曲目といえば、これしかないっ!!といえるのが、主題歌でもある「Four More Shots Please!」に、ナタニアのラップバートを加えて再構築した「Four More Shots Please! (Era Ver)

全シーズンを通してのオープニング曲として、毎回耳にする、一番馴染み深い楽曲であり、私が「アフター6ジャンション」出演の際に紹介した楽曲でもある。

結局のところ、ナキータ・デソウザ(Naquita D’souza)というアーティストは、結構謎に包まれいてるのだが、おそらくカヴァー曲を中心としたアーティストなのだろう。パワフルな声量で、S3の「Burned Out」も印象的だった。

Four More Shots Please!」は、S2のサントラにもDJリミックスバージョンが収録されているが、今回のバージョンは、4人の旅は終わりではあるが、新たな始まるでもあるという、オープニング感とラスト感という、両極端なものを共存させた、今作を締めくくるのに、最も相応しい曲としての機能を果たした。

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