映画・ドラマ短評『Love, Sitara』(2024)
もともと2021年の公開を目指して制作されていたが、新型コロナの影響で延期になり、今年の9月27日にZEE5での配信で落ち着いた作品。
監督のヴァンダナ・カタリアと脚本のソニア・バーヘルは、前作『Noblemen』(2018)から続くコンビであるが、そこに『Visfot』(2024)や「Rafta Rafta」など、配信ドラマや映画で忙しいフセイン・ダラールとアッバス・ダラールが現代的視点を入れているように感じた。それに加えて作品としての崩壊を食い止めている。それでいて、どことなく「ジー・カルダ ~絡み合う7人の友情~」感がするのもそのはずで、このふたりが手掛けていたからだ。
主演は『モンキーマン』や「PS」シリーズにも出演していた、元フェミナミスインドバンガロール2013優勝者のソビタ・ドゥリパラ。共演に「フォー・モア・ショット・プリーズ!」でシディの恋人を演じていたラジーヴ・シッダールタ、『クラス ’83』(2020)のタマラ・ドソーザ、『アルターフ 復讐の名のもとに』(2000)のソナーリ・クルカルニーなどが名を連ねる。
ストーリーとしては、インタビューを受けるほど、そこそこ有名なインテリアデザイナーのシタラ(ソビタ・ドゥリパラ)は、未婚の状態で妊娠していることがわかる。帳尻を合わせるために、恋人で料理人のアルジュン(ラジーヴ・シッダールタ)に結婚を申し込み、アルジュンはそれを受け、突然決定した結婚に友人は家族も驚きつつも、結婚式の準備が進められていく……という入り口なのだが、シタラはアルジュンに妊娠したことを言っていない。それは何故なのかが後々わかってくるというもの。
見切り発車にもほどがある展開だし、受け入れがたい部分もあるが、都合よく展開されるようなキャラクター構造にされている。
シタラの家族は、割とリベラルであり、結婚観の変化も理解しているようだ。その点で家系やらカーストやらの問題は、ほとんどノータッチ状態。当人たちがそれでいいなら、結婚しなさいといった考え方を持っている。妊娠していることがわかっても、婚前だからといって攻めたりしない家族にも感じるし、アルジュンも優しい性格なだけに、それならどうして……と、さらに疑問がふくらんでいく。
結婚すると決まってからは、家族や友人の祝福モード。なんだかんだでコミカルなテイストなのかと思うほどに、にぎやかな画が続ていく。
そんななかで、自分の問題とは別に、母親ラタの未婚妹ヘマと父親のゴーヴィンドが不倫しているかもしれないという疑惑が浮上してくる。家族の秘密をたまたま知ってしまい、無視することもできず、その隠し事を調べていくうちに、自分も大きな隠し事をしていることが耐えられなくなっていき、あるとき、それを全てぶちまけてしまう……。
そこまではよかったのだが、後半はかなり脚本のバランスやキャラクターの情緒・倫理観が完全に崩壊している。
ケーララ州を舞台としているのに、ほとんどヒンディー語という指摘もされているが、そんなことよりよりも無視できない具合である。
何より修復不可能な部分が放置状態。1時間40分程度の作品ということで、尺的に足りなかったのか、あえて短くすることで、処理できないことは放置するという手段を可能とさせたのかは不明だが、とにかく一番肝心な家族と恋人の絆や信頼を修復し、その先に進めるという行為を強引に行っていることで、人間ドラマとして雑に感じてしまうし、最後の最後で薄っぺい余韻を残してしまう。
先行シングルとしてリリースされ、ダンスシーンに使用されているアヌシュ・マリ、ハルシュディープ・カウル、シャルマリ・コールゲイドによる「Ungliyon Pe」は、メンバーは2010年代のボリウッドを感じさせるような曲となっている。近々でいえば『PS-1 黄金の河』(2022)でダンスシーンはあったが、実はソビタのダンスシーンはなかなか貴重で、今回はそれが観れたのはよかった。
個人的にソビタがロザリオ・ドーソンに似ている気がしてならない。