映画・ドラマ短評『KILL』(2023)
日本では、松竹配給で2025年公開予定。ジョン・ウィックの監督チャド・スタエルスキがリメイクを発表した話題作でもある。
8月21日発売の「映画秘宝」で簡単な紹介記事を書いたのだが、公開に向けて、何度かメディアで取り上げる予定。そして音楽についてももちろん特集します。
「ポロス~古代インド英雄伝~」のラクシャと「トゥース・フェアリー ~恋のヒト噛み~」のターニャ・マニクタラというスタードラマ俳優が共演するバイオレンス・アクション。
ちなみに「Criminal Justice: Behind Closed Doors」などで注目されるZ世代女優のアドリア・シンハーも出演しており、こちらもドラマ俳優だ。
適役は『ストリート・ダンサー』や『Kisi Ka Bhai Kisi Ki Jaan』などの映画にも多く出演するラーガヴ・ジュヤールではあるが、こちらもダンス系のオーディション番組の司会や審査員、先日配信が開始されたZEE5オリジナルドラマ「Gyaarah Gyaarah」など、テレビ界のイメージの方が強い。
どうしてラクシャとラーガヴというシルエットが似ている俳優を選んだのかわからないが、暗いシーンではどっちがどっちかわからなくなるのは難点ではある。観ている限りでは、光と影のような演出で選んだわけではないはず。
大衆映画やボリウッドのトップ俳優を血塗れにするのは、まだまだ先の話(『シンガムアゲイン』のアルジュン・カプールは気になるが……)になりそう。ということで、配信サービスの影響で知名度が増した中間的な立ち位置にいるドラマ俳優を起用することで、なかなか攻めた企画を実現させやすくなっているのだろう。
今後も中間的な予算と攻めた内容の場合は、ドラマ俳優は重宝されていくはずだ。
アクション監督のSe-yeong Ohは、『WAR ウォー!!』や『ファイター』といったレーティングを下げたボリウッドの大衆的なアクション作品には参加しているものの、もともとは『花嫁はギャングスター』や『神弓-KAMIYUMI-』、最近だとNetflixドラマ「今、私たちの学校は…」といった韓国エンタメ界からインドエンタメへの参戦組のひとりということもあり、こういったバイオレンスをインドでもやってみたかったのだろう。アクションシーンが活き活きとしている。
約1時間半というスマートな作品ではあるが、監督のニキル・ナーゲーシュ・バツトは、基本的に2時間以内の映画を撮る監督として知られており、これは「映画秘宝」のなかでも書いたことだが、プロットの組み立て方がもともと欧米的なのである。
ストーリーは実にシンプル。電車内の横スクロールアクションがほとんどの映画ではあるが、そのなかで巻き起こる殺戮ショーの間で起こる小さなドラマで感動するシーンもあったりと、短い中によく詰め込まれているし、セリフがあまり無くてもバックボーンが見えてくるサブキャラクター構造が見事。
ゴア描写も満載ではあるが、一周回って、暴力って何だろう?と改めて思ってしまう。
消火器で跡形がなくなるほど頭をぐちゃぐちゃにするシーンなんてインド映画で観たことあったっけ~と思ったけど、配信系だといくつかは思いつく(それは別で紹介するつもり)が少数派だし、ぼかし処理されている。
重要なネタバレになってしのうため、詳細は言えないのだが、冒頭というか、20分ぐらい経ってからのタイトルの出し方が悪趣味。
愛する人を守るために闘うヒーローの話かと思っていると、そこで何かが違うことに気付くはずだ。
ミュージックビデオもいくつか公開されており、映画を観ないで観るとラブソングのように思える曲も、観た後では意味合いが変わってくるだろう。