映画・ドラマ短評『美に魅せられて2』(2024)

前作『美に魅せられて』(2021)から、精神的ではなく、直接的な続編。

前作は夫・リシュ(ヴィクラム・マシー)の死を偽装し、未亡人となったラニ(タープシー・パンヌ)が、本当は生きているリシュと遠くの地を目指すというところで終わった。

その後、ラニは未亡人として、リシュはラビと名前を偽り塾の講師として暮らしながら、密会を繰り返していたが、そこにニールの伯父で警官のモントゥが現れる。モントゥ(ジミー・シェールギル)はリシュが死んで、ニールが行方不明となっていることからラニがニールの居場所を知っていると思い近づいてきた。

続編が制作されると聞いて、前作がある程度まとまっていたのに、そこからどう繋げると思うかもしれない。

そう、この作品はじまりから不安定な空気に包まれており、繋げ方が、なかなかぎくしゃくしているのだが、逆に言えば逃亡した者たちは、そうやって危ない綱渡りと負の連鎖を潜り抜けて生活しなければならないことを物語っていると思うと、それはそれでしっくりきてしまう。

それでいてラニとリシュは、夫婦であったものの、一度は心が離れていたこともあり、心から信用することができないけど、心から愛しているという昼ドラめいた関係性が凄く活かされていて、今回登場する新キャラクターでラニを未亡人だと思っているアビマニュ(サニー・コウシャル)を利用して偽装結婚することで警察の目を背けさせる点も、自分たちの愛のためには何でも女性ということがわかる。

ところが、アビマニュの未亡人であったラニを気遣って新婚であっても肉体的な接触を強要しようとしない優しさと、偽装でも結婚生活という環境によっておこる情の芽生えなどで、アビマニュにそのままなびいてしまう危険性もあったりして、ラニが心から信じられる女性でないこともこの作品をスリリングにさせている要因だ。

一方、リシュにも正体を知る義足のプーナム(ブミカ・ドゥベ)が、秘密をネタにアプローチしてきており、リシュのアビマニュへの嫉妬心から一線を越えてしまわないかという危険性もある。

つまりこの作品は、そんなふたりの愛を本当に信じられるのかということを、観ている側に投げかけてくるのだ。

「美に魅せられて」という邦題はよくできていて、これには愛によって狂ってしまった男たちという意味もあるのだろう。

ちなみに前作同様にインドのベストセラー作家ディネシュ・パンディットの名前がたびたび出てくる。モデルはいるかもしれないが、これは架空の人物である。そのためパンディットの小説が引用されているが、はっきり言って何でもありなのだ。

関連記事一覧