映画・ドラマ短評:『Crew』(2024)
クリティ・サノン、タブー、カリーナ・カプールのトリプル主演によるクライム・コメディ『Crew』。
とくにクリティ・サノンが魅力的なキャラクターを演じていて、表情も良い。
Netflix映画『諜報』など、最近は渋い役が多かったタブーだが、非常に可愛らしい演技をしていて、久しぶりにコメディエンヌとしてのタブーを見ることができるのも貴重だ。
カリーナ・カプールは……。
上映時間2時間と丁度良い内容で、これを3時間に延ばすと間延びしてしまうため、良い具合に編集されている。こういったカジュアルな作品をもっと日本でも公開してもらえると、インド映画=長い上映時間という一回りも二回りも古い情報は払拭されると思うのだが……。
それに加え、全米ボックスオフィスにもランキング入りしたこともあり、わかりやすい内容とテンポの良さで、世界的に王道のプロットにのっとった作品といえる。
ビジュアル的にキラキラしたガールズムービーに思えるかもしれないが、現実にある社会問題をいくらか取り入れていて、キャビンアテンダントは、決して華型の職業としては描かれていない。それどころか空港業界自体が不安定になっていて、稼ぎがタイムリーに減っていくことで、経済的に苦しい様子が映し出され、それぞれのキャラクターが経済面において先が見えず、それなりの苦労を抱えているような状態。
空港業界の経済難という点というと、インドでは経営破綻したキングフィッシャー航空が有名であり、実際にいくらか下敷きとしてあるような感じはするが、そこにより近々の現代的問題を織り交ぜ、さらにコロナによって拍車がかかった空港業界をシニカルに描いている。
ただそれらのテーマに関しても、重過ぎず、軽過ぎずといった絶妙なバランスで処理されていて、あくまで娯楽作品としてのあっさり味を保っている。
作中曲「Naina」と「Choli Ke Peeche」にも参加しているディルジット・ドサンジも出演している。ディルジットといえば、ツアーチケットが即完売、シーアやスウィーニーといった海外アーティストともコラボを実現させてきたグローバルアーティストとしても知られているが、Netflix映画『チャムキラ』や『JOGI -街が炎に包まれた日-』なども高評価で、俳優としても評価されている。あくまで主演は3人の女優ということで、存在感はそれほどないなかでも、落ち着いた演技をみせている。
音楽で残念だったのは、おそらく作品のリードソングであるイラー・アルンとロミーによる作中曲「Ghagra」の切り取り方だ。同曲は、スラシュティ・タワデにとって、劇場公開映画としてはプレイバックシンガーとしてのデビュー作品であるのだが、ラップパートまで使用されておらず本編ではカットされてしまっていることは残念でならなかった。
また、あえて言うなら、主演の3人の世代が若干違ってはいるが、一番若手のクリティ・サノンも今ではベテラン女優であることから、もう少し若い女優をトラブルメーカー役として、『Almost Pyaar with DJ Mohabbat』のアラヤ・Fや『理想の花婿』のターニャ・マニクタラあたりをキャスティングすると世代間ギャップも交えたシスターフッドものとしてのおもしろさはより一層高まっただろう。