インドエンタメあれこれコラム:K-POPとインドの関係性が生み出す新たな流れ
インドでも韓国エンタメが人気であり、2023年には、韓国カルチャー好きの女性を主人公としたマラヤーラム語映画『Oh My Darling』も公開された。
韓国ドラマや映画は、NetflixやAmazonプライムなど、音楽はYouTubeやSpotifyを通じて簡単に観て聴ける時代になったこともあるのと、K-POPダンスコンテストなども定期的に行われるなど、とくに若者を中心に人気を博している。
ついにインドやパキスタンなど南アジアのコンテンツだけを扱っていたZee5でも韓国ドラマや映画が配信し始めたほど。
インディアタイムズ調べによると、インド国内には、2022年の時点で1500万人の韓流ファンがいるとされている。
ただ、K-POPスターたちによるライブは、まだあまり行われておらず、慎重に畑を耕している状態ではあるが、今後そこの壁も突破し、更なる韓国カルチャーブームが起きるだろう。
「ディル・ドスティ ~夏休みのジレンマ~」のアヌシュカ・センが韓国観光公社の広報大使に任命されるなど、Z世代のインドスターからも韓国ブームは伝染していくだろう。
そんなインドでの韓国カルチャー人気というのは、当然ながら韓国側にも伝わってきていて、韓国内部からもインドユーザーもターゲットとして取り込もうとする流れが出てきているからだ。
始めてのインド系メンバーを入れたグループでいうとBLACKSWANのスリヤであり、次にX:INのアリアが続き、先日オーディションで選ばれたゾーイもそうだし、ホームグラウンドはアメリカであってもK-POPの遺伝子をもつKATSEYEのララもインド系アメリカ人。ちなみに姉は「アメリカン・アイドル」で話題になったリア・ラージだ。
X:INは他にもロシア系のノヴァやオーストラリア系のイーシャがメンバーもいたりするが、単に多様性を求めて国際色を強くしようとしたわけではない。
例えばX:INの「SYNCHRONIZE」や「KEEPING THE FIRE」という曲は、明らかにインド特有のビートが取り入れられているし、BLACKSWANの「カルマ」はかなりストレートであるように、ビジュアルだけではなく、確実にインドのサウンドを取り入れようとしている点から、インドのK-POPユーザーをターゲットとしていることがわかる。
それと同時に、韓国人の間でもインドカルチャーへの注目度も増している。
ノラ・ファテヒやW.i.S.H.の新曲がリリースすると、すぐにリアクション動画であふれかえるほどで、とくに音楽に関しての注目度が高いといえるだろう。
世界を巻き込みポップグループ戦国時代に突入している。日本からも多くのK-POPを意識したグループが誕生しているのだから何となく肌で感じられるほどになっているだけに、今後もK-POPグループのメンバーのひとりがインド系という流れは続いていくだろうが、それを黙っていないのがインドである。
W.i.S.H.がインド国内のK-POPユーザーの目を向けさせようとしているのと同時に、国外のK-POPユーザーにI-POPを注目させようとしている流れからわかるように、今後グローバルアーティストが増加することは目に見えている。
I-POPの”I”というのが、同じくグローバルグループを多く輩出しようとしているインドネシアやポップミュージックが盛んになり始めたイランなどと被ることから、I-POPの争奪戦が始まろうとしている。
ただこれは全世界共通ではあるが、グループが多すぎるのも問題である。
2000年代のバックストリートボーイズやスパイスガールズの嵐が過ぎ去った後の類似グループの末路を辿ってしまうような、第2次アイドル消費時代にすでに足を突っ込んでいることにも注意が必要だ。